夏を前に身体の準備!
徐々に外気温は上昇し、季節は春から夏へと移行する時期になりました。
今のこの時期は、夏の厳しい暑さを乗り越えるために身体の準備をする期間になっています。
日本には四季があるので、夏の暑さにも冬の寒さにも耐えなければなりませんが、それぞれ春と秋にどのように過ごすかは気温の変化で体調を崩さない身体作りのために大変重要です。
今回は熱中症とその対策、夏の暑さに耐えるために今の時期だからできる暑熱順化(しょねつじゅんか)についてお話ししていきます。
暑熱順化とは暑さに身体を慣らしていくという意味ですが、スポーツを楽しむ方はもちろん、夏の仕事はエアコンの効いた室内で行うという方にも大切ですので、知識を深めておきましょう。
目次
熱中症の基礎知識
熱中症は重症度別にⅠ〜Ⅲ度の3つのステージに分けられます。
症状の軽いものであれば、似たような状態に陥った事がある方も、またそれを見たことがある方もおられるかと思います。
しかし運動中において、それが熱中症の症状であるかどうかをきっちりと見分けることは難しく、判断を誤れば命に関わることもあります。
ステージ毎に症状を確認し、医療機関を受診するのか、救急搬送が必要なのかの判断の目安を知っておきましょう。
重症度Ⅰ度(軽症)
Ⅰ度の熱中症はめまい・一時的な失神、こむら返り・筋肉の痙攣などの症状が起こります。
それぞれ熱失神、熱けいれんと呼びます。
身体の熱を外に逃がそうと血管が拡張するので、血圧が下がり脳への血流が低下して熱失神が起こります。
熱けいれんは大量に汗をかいた後、水だけで水分補給をした時に血液中の電解質(ナトリウム)濃度が低下して手足や体幹の筋肉に痛みを伴う痙攣が出現します。
どちらの場合でも、体温に異常が出ることは少なく発汗も見られます。
Ⅰ度の熱中症が起こったときの対処法は、めまいや痙攣が見られる場合、経口補水液など吸収の効率がよいもので水分を補給し、日陰など比較的涼しい場所で安静にして身体を冷やすと良いでしょう。
気分不良などで自力で飲むことが難しい場合はストローなどを使うとスムーズに飲める場合があります。
また、飲み込むことが難しい場合は無理に水分補給はせず、1度口に含んでから吐き出してしまっても良いでしょう。
少し休憩しても水分補給が自力で行えない時は、医療機関へ搬送しましょう。
重症度Ⅱ度(中等症)
Ⅱ度の熱中症は大量に発汗し、強い疲労感が起こります。
大量の発汗に水分補給が追いつかず、脱水になったこの状態を熱疲労と呼びます。
熱疲労では身体の中に熱がこもり、体温が39°近くまで上昇します。
汗はたくさん出ますが体温に反して皮膚温はそれほど上昇しないことも多いので、注意深く観察する必要があります。
重症化するとⅢ度熱中症へ移行し命に関わりますので、迷わず救急車を呼んで病院へ搬送しましょう。
体温を効率的に下げるためには衣服を緩め、足を少し高くして寝かせて、大きな動脈の通っている所(首、ワキの下、足の付け根)にアイスパックを当てましょう。
衣服を緩めにくい状況にある時には、身体に水をかけてうちわなどで煽ぐのも効果的です。
重症度Ⅲ度(重症)
Ⅲ度の熱中症は、熱疲労が重症化したもので、40°を超える異常な高体温になります。
この状態を熱射病と呼び、速やかに救急搬送が必要な状態です。
熱射病では、高体温により中枢機能に異常をきたし、意識障害を起こしたり、多臓器不全に陥ります。
また、発汗が止まり皮膚が乾燥するのも大きな特徴の1つです。
応急処置の方法はⅡ度までと変わりありませんが、一刻も早く医療機関へ搬送し、冷却・輸液・人工透析といった処置が必要になります。
熱中症は運動開始後30分以内に起こる事が多く、それはウォーミングアップ時などのややハードな運動時である事が多いですので、運動の疲労感なのか、熱中症の症状であるのかをきっちり見分ける必要があります。
運動時に症状が出現しなくても、運動後の倦怠感が抜けない・尿の色が褐色である、という場合も1度医療機関で受診するのが良いでしょう。
熱中症対策
小児や高齢者、寝不足や疲労がある、持病がある、気温・湿度が高く発汗が促されにくいなど様々な要素が熱中症リスクを高める事も知っておきましょう。
そして1度熱中症の症状が出現したら、いくら軽度で回復が見られても、当日の運動復帰や身体を動かすことはは原則しない方が良い、と考えてください。
病態だけを見ると非常に怖い熱中症ですが、対策をしっかり行えばその多くは予防できます。
ここで確認し、熱中症リスクを減らしましょう。
暑熱順化
暑熱順化とは、効率よく温熱性発汗ができるようにするため、暑さに身体を慣らしていく事です。
気温が上昇し始める5・6月ごろにかけて、運動をされている方は1〜2週間の間は運動量の調節が必要で、初めは運動量を半分に減らしましょう。
そこから徐々に運動の量を増やし、2週間程度で元の運動量に戻していきましょう。
運動習慣のない方は、比較的気温の下がる早朝か夕方以降に20分程度のウォーキングを行ってみましょう。
本格的に暑くなるまでの間に、20〜30分のジョギングができるように運動調節を行います。
この時期だけでも運動習慣を身につけると、熱中症だけでなく、夏バテ予防にもつながります。
生活の中での冷房の使用にも注意が必要で、6月頃から冷房を使用することによって暑熱順化を遅らせてしまいます。
室温を28°以下に保てる環境にあれば、早い時期からの冷房の使用を控えましょう。
水分補給
暑熱順化ができて、効率的な発汗ができるようになったとしても、暑熱環境での障害である熱中症は予防できません。
正常な順化によって発汗量が増えるので、体内の水分量が減少した脱水症状にならないよう、こまめな水分補給が必要になります。
汗の成分のほとんどが水分ですが、ナトリウム・カリウムなども含まれていますので、水分とこれらのミネラル分の補給が重要です。補給するのに適切な水分は、
・5〜15°
・0.1〜0.2パーセントの塩分
・4〜8%の糖質
の3つを満たす飲み物です。
家庭で用意する事が難しい場合、市販のスポーツドリンクや経口補水液が適当です。
水分補給について高齢者に多い要因として、トイレの回数を減らしたいからあまり水分を摂らないという事がありますが、体の水分量が現象してくる高齢者では、夏場の水分不足は非常にリスクになりますので気を付けて下さい。
まとめ
熱中症対策で重要なポイントは、
・熱中症がどんな病態であるかを知ること
・暑さに慣れる身体作りをすること
・水分補給をこまめに行うこと
・救急車を呼ぶことを躊躇しないこと
です。
正しい知識で快適に夏を過ごしましょう!